歯科開業、憧れの都心か?データが語る「成功しやすい」エリアの新常識!
「いつかは自分の歯科医院を…」そうお考えの先生にとって、「どこで開業するか」は成功を左右する非常に重要な決断です。開業エリアによって患者さんの数に大きな差が出るだけでなく、保険診療中心か自由診療に力を入れるかといった診療方針によっても最適な場所は変わってきます 。
多くの先生方が「理想の開業場所」として挙げるのは、銀座や青山、新宿、渋谷といった都会の華やかなエリアや、「住みたい街ランキング」上位の街かもしれません 。確かに、そうした場所での開業はイメージも良く、誰もが一度は憧れるものです 。しかし、「成功しやすいか?」と問われると、話は少し変わってきます。「開業したいエリア」と「成功しやすいエリア」は、必ずしもイコールではないのです 。
歯科開業におすすめのエリアは「郊外」にあり!
実は、歯科医院の開業で成功しやすいのは、都心から電車で30分~1時間ほど離れた「郊外のエリア」です 。具体的には、東京であれば千葉・埼玉・神奈川のエリアが挙げられます 。この傾向は首都圏に限らず、大阪や福岡のような大都市でも同様で、中心部よりも郊外の方が開業に向いていると言えます 。さらに言えば、人口が集中している大都市よりも、そこから少し離れた地方都市の方が成功しやすいというデータもあります 。
なぜ郊外・地方が有利なのか?カギは「一歯科医院あたりの人口」
「地方は人口が少ないのでは?」「郊外では集患が難しいのでは?」と思われるかもしれません。確かに、都市部に比べて地方や郊外の総人口は少ない傾向にあります 。しかし、重要なのは単純な人口数ではなく、「一歯科医院あたりの人口」です 。これは、「1つの歯科医院に対して、潜在的な患者さんが何人いるか」を示す指標で、この数値が高いほど、1つの歯科医院がカバーできる患者さんが多く、集患において有利と言えます 。
2022年1月の総務省の人口推計によると、日本の人口は約1億2,531万人。一方、2020年の厚生労働省の医療施設調査では、歯科医院の数は約68,000医院です 。これを単純に割ると、1つの歯科医院に対して約1,800人の潜在患者さんがいる計算になります 。
この全国平均を基準に見てみると、
- 千葉・神奈川:約1,800人前後(平均並み)
 - 埼玉:約2,500人(平均を上回る)
 - 東京:約1,300人(平均を下回る)
 
という状況です。東京は人口も多いですが、それ以上に歯科医院の数が多いため、1医院あたりの患者数は少なくなるのです 。都心部に至っては、この数値が1,000人を下回るエリアも珍しくありません 。これは住民基本台帳に基づくデータですが、近年の在宅勤務の増加などを考慮すると、都心部が以前よりも不利になっている可能性は否めません 。
一方で、千葉・埼玉・神奈川の郊外エリアや地方都市では、「一歯科医院あたりの人口」が1,800人を超えるエリアが多く存在します 。
具体的に考えてみましょう。例えば、千葉で1日に20人の患者さんが来院する歯科医院があったとします。同じ条件で東京の都心部で開業した場合、このデータに基づけば1日13人しか来院しない可能性があるということです 。それだけ都市部は競争が激しいと言えるのです 。
都会で開業する場合の戦略
もちろん、都会で歯科医院を開業することが間違いというわけではありません。都会の最大のメリットは交通の便が良いことで、これにより遠方からの患者さんを集めることが可能です 。
もし都会で開業を目指すのであれば、「一歯科医院あたりの人口」が少ないという厳しい競争環境を十分に理解した上で、それを補って余りある集患力のある医院を作る戦略が不可欠です 。専門性の高い治療、卓越した技術、独自のサービスなど、明確な「特徴」を打ち出し、遠くからでも患者さんが「わざわざ来たい」と思えるような魅力的な歯科医院を作ることができれば、成功の道は開けるでしょう 。
まとめ
イメージだけでなく、データに基づいたエリア選定を
歯科医院の開業場所を選ぶ際には、単なる憧れやイメージだけでなく、客観的なデータに基づいた冷静な判断が求められます。「一歯科医院あたりの人口」は、その重要な判断材料の一つです。
もちろん、開業エリアの選定には、ご自身の診療方針(保険診療中心か、自由診療に力を入れるかなど)や、通勤の利便性、さらにはライフプランなども含めて総合的に検討する必要があります 。
今回の情報が、先生のクリニックにとって最適な開業場所を見つけるための一助となれば幸いです。エリア選定は、歯科医院経営の成功を左右する非常に重要なステップですので、じっくりと時間をかけて、後悔のない選択をしてください。
